春の苑くれなゐにほふ桃の花した照る道に出で立つをとめ
詠み人:大伴家持

紅に照り輝く満開の桃の花、木陰までもが照り映える。
その中に佇む少女は花の精のよう美しい。

この花の一よの内に百種の言そ隠れるおほろかにすな
詠み人:藤原朝臣広嗣

この花びらには色々な言葉の意味が隠っているのだよ
うわついたり、疎かにしてはいけないよ

〜恋歌〜

あしひき山桜花一目だにきみとし見てば我恋ひめもや
詠み人:大伴家持

一目でもあなたと一緒に花を見られたら、
 山桜なんて、こんなに恋しいと思わないのに‥

春恋歌

若草の新手枕をまきそめて夜をや隔てむにくあらなくに
詠み人:不詳

若草のようなあなたを得て、その手枕で寝られるようになったのに、
なぜこんなに逢えない夜が二人の間に入り込むのか‥
こんなにあなたが可愛いく思えるのに‥

さにつらふ妹を思ふと霞立つ春日もくれに恋ひわたるかも
詠み人:

頬を赤く染める美しいあなたに、うららかな明るい春の日も暗く感じるほど、
激しく恋をしている。

はる野にすみれ摘みにと来し我そ野をなつかしみ一夜寝にける
詠み人:

野のすみれを摘んで、前祝いをしようと来たら嬉しくって
一晩ここで過ごしてしまったよ

万葉恋歌

こころぐしきものにぞありける春たなびくときに恋のしげきは
詠み人:大伴坂上郎女