悲恋

〜ひれん〜

なかなかに黙もあらましを何すとか相見そめけむ遂げざらまくに
詠み人:大伴家持

こんな事になるのなら黙っていれば良かった。どうして出会ってしまったのだろう・・
永遠に添い遂げる事なんて出来るわけないのに

君が行く道の長手を繰りたたね焼き亡ぼさむ天の火もがも
詠み人:茅上娘子

あなたは行ってしまう遠い旅路‥それを思うと胸が張り裂けそう。
天の火でその遠い道をたぐりよせ折りたたみ燃やしてしまいたい

わが屋戸の松見つつあれ待たむ早帰りませ恋ひしなにとに
詠み人:芽上娘子

私は、家の松を見ながらあなたのお帰りを待ちましょう。
どうか早く帰ってきて下さいね。恋が死なないうちに‥

このころは君を思ふと術も無き恋のみしつつ哭のみしぞ泣く
詠み人:芽上娘子

この頃はあなたを思い、どうにもならない恋に苦しみ、ただ、ただ泣いてばかり‥

あしひきの山の雫に妹待つとわれ立ちぬれぬ山の雫に
詠み人:大津皇子

あなたの来るのを待ち山かげにたたずんでいるうちに、
すっかり山の雫にぬれてしまったよ・・ずいぶん待たせるね。
でもいいよ。あなたを思っていられる事だけで今の僕は幸せだから‥‥

万葉恋歌